第41話 小児科医の出会い
医者になってかれこれ20年になろうとしています。その間にいろいろなお子さんとの出会いと別れを経験しました。開業する前は血液疾患のお子さんを中心に診療をしていましたので、多くの悲しい別れを経験しました。つくづく、親よりも早く亡くなるのは最も親不孝なことだなと思わされました。特に自分も親となってからは、患者さんのご両親の強さにはいつもながら頭の下がる思いでした。この時だけはなんで小児科医になったのだろうと後悔しました。
その一方で、元気になっていったお子さんの大きくなった姿に出会えるというのは、小児科医ならではの喜びでもあります。開業して間もなくの頃でしたか、近くの女の子がお母さんと一緒に外来を受診されました。どこかで、聞いた事のなる名前だなと思っていたところ、お母さんから「先生、この子を覚えていますか?」と尋ねられました。「この子の足の傷は先生がつけたのですよ」と笑って言われ、やっと思い出しました。研修医2年目の時、新生児センターで担当したお子さんでした。確か、出生児体重が900g程度しかなかったのですが以外と大きなトラブルもなく退院されました。傷は足から採血を何度も行なったために出来たものでした。その後、どうなったのかは知らなかったのですが、元気に大きくなった姿をみて少しはお役に立てたのかなと嬉しくなりました。
それから、最近になって数年に1回程度会うようになった女の子がいます。Mちゃんは大学病院の研修医時代に受け持った患者さんでした。遺伝性球状赤血球症という、珍しい病気で脾臓を摘出するという手術をするために宮崎から紹介になったお子さんでした。経過は順調で無事退院していきました。笑顔のかわいい女の子で、ご両親もすごくいい方だったのを記憶しています。その後は全く連絡もなかったのですが、ふとしたきっかけでメールのやりとりするようになり、実際に会いましょうということになりました。数年前は彼女の職場が中部国際空港だったので、家族旅行の際に久しぶりに会いました。昔と変わらない笑顔の素敵なお嬢さんになっていました。僕の中では小さい可愛らしいMちゃんだったのですが、月日の経つのは早いものだと感じました。今は別の仕事をしていますが、運良く今年も会って一緒に食事をすることができました。
小児科ですから、中学生くらいになれば自然と当院を受診する回数は減ります。そのうちに小さい頃にかかりつけだったお子さんが自分の子供を連れてくるようになるのでしょうか。さすがにまだこのケースはありませんが。開業してそろそろ丸8年が経過してこの10月からは9年目に突入しますが、これからも多くの方との出会いを大切にしていきたいと思っております。
【2011年9月】
よしもと小児科 吉本寿美