第64話 トップの責任
既にご存知だとは思いますが、先月ロアッソ熊本の吉田監督が退任されました。事実上の解任です。スポーツ、特にサッカーの世界では珍しいことではなく、今回の対応は少し遅かったようにも思います。やはり、ホームでの勝敗が1勝2分け8敗では仕方ないでしょう。プロである以上、結果が全てであり勝っても負けても全責任は監督なのです。厳しいと言えば厳しいのですが、選手も来年契約出来る保証なんて誰1人としてなく、1年1年が勝負なのです。そう考えると、スポーツの世界で活躍するのは改めて大変なことなのだなと思います。
代わって監督代行となられたのが池谷社長です。たまに宴席でお話をさせて頂く事がありますが、非常に素晴らしい方です。今回は社長業と監督代行という2足のわらじを履く事になられましたが、是非ともチームの立て直しを期待しております。経営の事もいろいろ悩みが多いと話しをされていましたが、何とか我々サポーターが支えてあげなくてはと思います。縁もゆかりもない地に来られて、地道に努力されている姿は頭が下がります。なかなか赤字の会社社長になりますと手を挙げる人なんか、そういないですよね。
トップと言えば、一応僕もクリニックのトップという立場にあります。とてもスポーツの世界のトップとは比べ物になりませんが、それでもそれなりに誰にも言えないような悩みや苦労というのはあるものです。開業する前には想像もつかなかった事も多く、改めて開業って大変だなと感じています。勤務医の頃は診療のみをやればよかったので、今思えば楽でした。ところが開業しますと、まずは仕事よりも経営の事を考えなくてはいけませんし、労使の問題も発生します。当然、病院に対するクレームもありますので、その対応も最終的にはトップの責任となります。
また、トップだからといってあぐらをかいている訳にもいきません。ロアッソ熊本の池谷社長も自ら試合前のピッチボード運搬をされているそうです。かくいう僕も少人数のクリニックゆえ、朝からいろいろな雑務をこなしています。辛い事も多いのですが、好きなようにやれるという特権は最大の魅力ですね。それくらいしかないと言えばないのですが。
今回のロアッソ熊本の監督交代の件では、いろいろ自分も考えさせられましたし、トップの責任は非常に重いものだと改めて感じています。どの世界でもトップに立つ方の重圧は計り知れないもので、病院を経営するのも同じようなものだなと思います。もし自分が倒れたら患者さんは困りますし、職員も働く場所を失ってしまいます。外来が忙しい時には、職員の体調が心配になりますし、暇な時期には経営は大丈夫かなと考えてしまいます。開業をしなければよかったと後悔したこともありますが、多くの方の支えがあって今日まで何とかやってこられました。僕の場合は、スポーツの監督と違ってよほどの事ないかぎり解任はないでしょうから、その点は少しだけ安心していますが。
J2も後半戦に突入しました。トップが責任を取った今こそ、我々サポーターの出番です。どうかみんなでロアッソ熊本というオラが町のチームを応援しましょう。週末はスタジアムで飛び跳ね、勝利のカモンロッソを踊りましょう。
【2013年8月】
よしもと小児科 吉本寿美