第154話 上を向いて歩こう
相変わらずニュースも新聞もコロナの話ばかりで、いい加減うんざりしています。大事なことだとはわかっていますが、熊本であれば被災地のその後など何か報道する事はないのかなと思ってしまいます。コロナの影響は小児科にも波及し、昨年以来自分の仕事の状況も一変して来られるお子さんは激減しました。また、保護者の皆さんにも子どもたちにも、笑顔が消えてしまったように思います。マスク越しなのでわかりにくいのかも知れませんが、最近はピリピリムードだけが伝わってきます。小児の場合はコロナ以外の病気がほとんどで、コロナは重症化する事はないと言われています。なのに、学校や保育園などは微熱でさえ一大事の如く対応され、咳でもしようものならすぐ帰宅させられてしまいます。もう少し正しく恐れることは出来ないものなのでしょうか。
当然ながら行動も制限されていますので、最近は何かを楽しむというのも簡単には出来なくなってしまいました。自分の唯一の楽しみは週末のスポーツ観戦ですが、現在は声を出す事も出来ずに席に座っての応援となりました。戦っている選手によると、ファンの応援というのは選手のモチベーションをかなり上げてくれるそうです。ですので無観客試合となった時は、なんだか練習試合のような雰囲気で全く盛り上がらなかったそうです。最近では中学生や高校生の試合も大会が中止となったり、無観客で行われたりケースも増えてきました。感染リスクを下げるためには仕方ないことなのかも知れませんが、生徒の心情を察すると心が痛みます。
基礎疾患があったり、高齢者であったりという方々が重症になって大変な状況であるのはわかります。であれば、もう少し早め早めの対応があってもよかったのではないかと思っている方は多いのではないでしょうか。後から言うのは簡単だと言ってしまえばそれまでですが、対応が後手後手になっている感じがします。コメンテーターなる人が連日のようにワイドショーで話されていますが、現場はそう簡単ではないのが現状です。もっと患者を診ろ、P C Rの検査をしろと簡単に言われますが、コロナ以外にも病気はたくさんあるのです。ワクチン接種の話が進んでいますが、実はこれも問題山積で簡単に接種が出来るようになるわけではありません。
小児科の患者さんが少なくて暇なのは、世間一般には非常に喜ばしいことではあります。ですが、入院患者も減っている大きな病院では小児科のベッドが他の診療科に回されているケースも出てきたようです。そうすると、もし入院が必要なお子さんがいた場合に、ベッドが使えなくなってしまうことも考えられます。当然、当院のような小さなクリニックでは経営状態の悪化を招いていて、このまま続けば閉院に追い込まれる可能性もないわけではありません。そうなれば、かかりつけのお子さんが困ってしまうのは明白で、更には他のクリニックにしわ寄せが及ぶことにもなりかねません。患者現象はいいことばかりではないのです。
診療のことや経営のことなど、考えればキリがありません。毎日朝から憂鬱な気持ちになってしまいますが、それでもきちんと朝日は昇りますし、マスクをしっかりつけた小学生は元気に登校しています。どうしても下を向いてしまうこの頃ですが、子供たちに元気になってもらうためにはまずは自分が元気でなければいけません。昔から出口のないトンネルはないと言います。まだゴールが見えない昨今ですが、辛くても上を向いて前に進んでいこうと思います。生きてれば辛いこともありますが、これからはきっといいこともあると信じて。
【令和3年2月】
よしもと小児科 吉本寿美