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第199話 「こたえる」ということ

小児科医のつぶやき|第199話 「こたえる」ということ

 今年は一向に秋らしい天気になりませんね。先月も夏のような気候で、この時期らしくない日が続いています。また先日のニュースで聞いたところでは、以前11月になっても30℃を超えた日があったようですので、いったい今年はいつになれば秋らしくなってくるのでしょうか。暑かったり、寒かったりというのは、正直こたえますね。これが熊本だと言われたらそうなのですが、もう少し春と秋が長くなればいいなと思うのは、自分だけではないでしょう。    


 こたえるといえば、自分の仕事もいろいろな問い合わせに「答える」のが日課のようなものです。ただはっきり病名がわからないケースも少なくはありません。その場合は出来るだけ分かりませんと答えるように心がけています。特に発熱の原因がいろんな検査をやってもわからないことは日頃からよく経験します。正確に「この病名になります」と1発で診断できればいいのですが、なかなかそうもいきません。そして後出しジャンケンではありませんが、最初は分からなくて後から病気の診断がつくというのは結構あります。例えば川崎病という病気は最初発熱だけのことが多く、しばらく経ってから発疹や目の充血、手足の浮腫、口唇発赤などの症状が出てきます。そうなれば小児科医ならば誰でも診断は簡単です。最初発熱の原因がわからないときに、いろんな病名を並べて保護者の方の不安を煽るのもどうなのかなと思いますので、どこまで答えるかというのは難しいところではあります。


 ただ我々の仕事は「答える」だけではなく、「応える」ということも大事になってきます。答えるというのは投げかけられたことに対して返事をすること、いわゆる単純にリアクションする場合であり、応えるというのは相手からの期待や要望に対して単純なリアクションに留まらず、この言葉のあとには尽力しますとか精進しますというのが続く場合が多いようです。診察して診断して終わりであれば、それは今の時代AIでも出来るようになってきたかもしれません。ただ相手は生身の人間ですから、1人1人症状も違うのが当たり前。当然家庭の状況などのバックグラウンドも違うはずです。ですから我々人間の医者が出来るのは、「答える」のではなくて「応える」ということではないかなと思います。診断したら、いかに良くなるように治療方針を持っていくか、そこが人間の医者としての腕の見せどころでもあります。  


 こうしてみると改めて日本語というのは、実は簡単なようでかなり難しいというのが分かります。こたえるというのは他にも「堪える」というのもあり、こちらは我慢するとか耐えるといったようなニュアンスで使われることが多いようです。最近は海外から引っ越して来られた方もかなり多くなってきました。当然日本語を流暢に話せる方は少ないので、英語で会話というのが主になってきます。自分の奥さんは結構流暢に英会話を使いこなしていますが、自分はそう得意でもないので苦労しています。ただ、意外と簡単な単語を並べて話せば何とか通じるようですので(文法はめちゃくちゃだとは思いますが)、英会話には度胸というのも必要だというのが分かりました。海外から来られた方にも出来るだけ「答える」だけではなく、「応える」ようにしなければと思っていますが、どこまで真意が伝わっているかはいまだに疑問ではあります。    


 これからだんだん寒くなってくると、小児科の外来も病気のお子さんが増えてきます。バタバタして余裕も無くなってきますが、そんな時こそ「答える」だけではなく「応える」という姿勢をこれからも忘れないようにしたいと思っています。  



【令和6年11月】
よしもと小児科 吉本寿美

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