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第77話 ある2人の若者の死

小児科医のつぶやき|第77話 ある2人の若者の死

 このタイトルでいいのかどうか、かなり迷いましたが最近立て続けに身近に悲しい出来事が起こりましたので、今回は死ということについて考えてみたいと思います。


 O君はサッカー少年で、かなり上手かったようです。お母さんも明るい方で、下のお子さんがよく当院に受診されていました。数年前にO君が脳腫瘍だということを風の便りで知りました。かなり状況は厳しいようだということも。お母さんは医療関係者でしたので、ある程度の覚悟はなされていたのかもしれません。それでも治療のお陰で大学にも進学出来たようですが、やはり病には勝てなかったようです。葬儀はかつてない程の人数であったと聞きました。運命というにはあまりにも若すぎますが、病気だけはどうしようもありません。


 K君は野球少年で、高校でも野球をやっていたようです。ご両親とも優しい方で、小さい弟君達が受診しています。ある日、新聞の事故の記事が目に留まりまさかとは思いましたが、翌日には亡くなったという記事が掲載されていました。確認したら悪い予感が的中してしまいました。トレーニング中に事故にあったらしいとのこと。友人を危ないと押しのけて自分が犠牲になったと聞きました。事故でしたので、ご家族はさぞびっくりされたことでしょう。気をつけていたとは思いますが、事故も気をつけていてもふりかかってくるものです。


 これからまだまだたくさん楽しい事が待っていたであろう、前途有望な青年が亡くなったのは残念でならず、ご両親の心情を察すると何と言っていいのかわかりません。運命と片付けてしまうには余りにも早すぎます。最近はありませんが、小児科医という職業では子どもの死の現場に立ち会うのは避けて通れないものでした。「逆縁」という言葉をご存知でしょうか。親よりも先に子どもが亡くなることをいうのですが、理由は何であれこれが一番の親不孝ではないかと思います。


 親という者はどうしても欲が出るものです。産まれる時は「元気であればいい」と願い、元気に産まれたら次は「賢い子になって欲しい」と願い、成長したら次は「いい職について」と欲が出てしまいます。でも、このように思えるのは元気に生きているからこそであってというのを忘れてはいけません。「生きてるいだけで儲けもの」という言葉がありますが、ほんとそうだなと思います。まず、元気で産まれてくること自体が奇跡なのですから。自分の子どもが大きくなった今だからこそ思うのですが、子どもが小さい時こそたくさん関わりを持って子育てを楽しんで欲しいと思います。病気はどうしても防ぐ事は出来ませんが、事故はある程度防ぐことは可能です。何が待っているのか、先の事は誰にもわかりません。どうか、子どもが小さい時は大変な事も多いですが、今を楽しんでください。後悔しても後戻りは出来ませんので。

 最後になりましたが、O君とK君のご冥福を心よりお祈り申し上げます。どうか、天国でも大好きなサッカーと野球を楽しんでくださいね。



【2014年9月】
よしもと小児科 吉本寿美

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