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第103話 検査について

小児科医のつぶやき|第103話 検査について

 ここ最近はクリニックでもいろいろな簡易検査が出来るようになり、ある程度正確な診断と治療が行えるようになりました。更には予防接種の普及もあり、抗生剤の処方が確実に減少しています。残念ながらまだ抗生剤の処方が多いクリニックもあります。そこは、その先生の考えなのであえて否定はしませんが、抗生剤の必要な病気はかなり少ないのです。不要な内服が処方されているときは、「この薬は止めてください」とお話をしますが、保護者の皆さんは「えっ...?」となるわけです。せっかく処方して貰った薬を飲むなとは、一体なんぞやという疑問がわいてくるようです。


 では、一体簡易検査をはじめとするクリニックでの検査は何のために行うのでしょうか。一番の目的は、抗生剤の適正処方を行うためではないかと思います。冬場だとインフルエンザがその代表かと思います。一般には高熱が出ますが、ウイルス感染症なので抗生剤は必要ありません。極端なことを言えば、抗ウイルス剤(タミフルやイナビルなど)も必要なしです。数日もすれば熱は下がっていきます。


 また、お盆過ぎから流行するRSウイルス感染症も、診断がついたら薬は対処療法のみになります。特効薬がないので検査しないという先生もいらっしゃいますが、それも一理ありますね。ただ、困ったことに園の方から検査をしてくるようにと言われて受診される方も少なくありません。でも、何でも検査をしたらいいということでもありません。検査は少しだけ痛みを伴いますし、RSの検査は3歳未満には検査料さえ請求出来ません(すればするだけクリニックの損失になります)。それでも敢えて検査をするのは、不要な薬を出さないようにするためなのです。


 一方、溶連菌とマイコプラズマは簡易検査で陽性が確認されたら、さすがに当院でも抗生剤を処方します。今年はオリンピックがあったので、マイコプラズマが流行しました(何故か、オリンピックの年に流行すると昔から言われています)。でも、抗生剤が効かない症例も最近散見されるようになってきました。明らかに抗生剤を多用した弊害であろうと思われます。


 他の検査では、当院は基本的には3日間熱が続けば採血を考慮するという方針を採っています。以外と高熱が続いていても何もなかったという場合が多いのですが、白血病を見つけたこともありますし、尿路感染症や川崎病の診断に結びついたこともあります。ただ、この検査にばかり頼ってしまってはダメで、しっかり診察をすることが大事です。その上で、何もないけどという場合にのみ検査を行うようにしています。データのみに頼ってはいけないということです。


 最近はおたふくかぜも流行していますので、当院は全例に抗体検査を行って正確な診断を行っています。特におたふくかぜは見た目だけでは反復性耳下腺炎との鑑別は困難です。おたふくかぜは腫れないケースもありますので、確定診断には悩みます。また、今年に入って、かなりの数の百日咳のお子さんの確定診断も行いました。そう多くない病気だと思っていましたが、実は意外に多いというのがわかりました。熱もなく、咳だけが続くというのが症状ですので、小学校高学年のお子さんに多いのですが比較的元気にしていて当然受診さえもしないために、蔓延することがあるようです。


 これ以外に、アレルギー検査やレントゲン撮影などの検査も必要に応じて行います。ただ、何でも検査をやればいいというわけでもないので、そこが難しいところではあります。医療費や本人の負担を考えればやらない方がいいでしょうし、きちんと診断して必要な処方を行うという点ではどんどん検査をやっていかなくてはなりません。


 たかが検査、されど検査。こうやって改めて考えてみると検査というのは奥深いものではあります。



【2016年 11 月】
よしもと小児科 吉本寿美

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