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第75話 日々勉強です

小児科医のつぶやき|第75話 日々勉強です

 長く外来診療をやっていると、それなりにお怒りの電話や不満を言われる場合もあります。100%を目指して診療しているつもりなのですが、どうしても思い通りに治らないということは時々あります。最初からバシっと確定診断出来ればいいのですが、そうはいかないのがこの業界の常です。いわゆる「あとだしジャンケン」ではないですが、最初はわからなくてもだんだん症状が出てきて、実はこの病気だったとわかることは珍しくありません。ですので、症状が揃えば診断は非常に簡単で、お子さんが病院巡りをした結果この病気でしたと判明するのは僕自身も幾度となく経験してきました。


 患者さん(特に保護者の方)は、どうしても治りが悪いといくつか病院を受診されて、その結果「他の病院に行ったらこの診断だった。どうしてくれるのだ。」ということになります。残念ですが、全て最初から確定診断しろと思われるかもしれませんが、その時点での診断しか医者にはできないのです。でもそうして連絡を頂けるのは自分にとってはありがたい事で、あの子はそうだったのかと自分自身の勉強になりますし、今後の参考にもなります。  では、お恥ずかしながら自分の経験した具体例を幾つか例示します。



①反復する腹痛

 小学校高学年のお子さん。表情はそう悪くはなく、腹痛を時々訴えるとのことで受診。診察しても何もなく、胃腸症状もなし。精神的なものかなと思い、経過観察。その後しばらく経ってからアレルギー性紫斑病でしたと連絡ありました。紫斑があれば簡単だったのですが、見抜けませんでした。

②嘔吐下痢?
 2、3歳のお子さんで嘔吐下痢と腹痛。胃腸炎が流行っている時期でしたのし、グル音亢進もあり胃腸炎でしょうという事で帰宅。その後、「盲腸が破れて入院している。なぜわからなかったのか。」とお叱りの電話。言い訳するつもりはありませんが、子どもの盲腸は診断が難しい疾患です。ただ、そこでは盲腸の可能性もあると説明しておくべきでした。

③突発性発疹?
 高熱のみで受診するも、採血は異常なし。突発性発疹の可能性がありますねと説明して帰宅。その後しばらくして、診断は間違っていなかったものの脳炎で入院中との事。幸い、退院は出来ましたが、若干の後遺症は残っているようです。突発性発疹の合併症として脳炎が起こる事は、小児科医ならば知らない人はいませんが、全ての方に脳炎が起こるかもしれませんと説明することは、不安を煽る可能性もあり行っていません。どこまで説明しておくべきか、考えさせられた症例でした。

④ぶつぶつ(発疹)
 これが最も頭の痛いところです。はっきり診断出来る水痘やじんま疹などは簡単ですが、わからない発疹の方も多数受診されます。最近では中学生の川崎病の患者さんがいらっしゃいました(日赤での最高齢だそうです)。数年前には、はしかのお子さんもいらっしゃいました。また、溶連菌でもぶつぶつは出ますし、薬疹のケースもあります。夏場にはウイルス感染症による発疹のお子さんも増えます。本当に子どものぶつぶつは難しいです。

⑤ヘルパンギーナ?
 咽頭に水泡があって熱があると、「ヘルパンギーナですね」ということになりますが、時に熱が続くるお子さんがいらっしゃいます。歯肉炎があればヘルペスと簡単に診断がつきますが、最初の水泡だけではヘルペスの診断は難しいものです。特に夏場はヘルパンギーナが流行するので、間違う場合もあります。


 以上はほんの1例で、他にもそうだったかと思う症例はたくさんあります。出来る限りミスをしないように心がけてはいますが、まだまだ勉強不足な点もありご迷惑をかけるケースもあるようです。気になる症例は次の受診を指示しているはずですので、どうかご協力をお願いします。全ての患者さんは、いろんなことを教えてくれる自分にとっては大切な先生であり、これからも医者を辞めるまでは日々勉強だと思っています。



【2014年7月】
よしもと小児科 吉本寿美

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