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第30話 ワクチンの治験

小児科医のつぶやき|第30話 ワクチンの治験

皆さんは「治験」というのをご存知ですか。新しい薬を使用するにあたっては「治験」を必ず行なわなくてはなりません。新しいワクチンの場合も「治験」が行なわれており、1、2、3相という段階があります。2、3相は人への投与が実際に行なわれます。これまでも当院にていくつかの治験を行ない、その都度多くのお子さんにご協力していただきました。そのお陰で、新しい日本脳炎ワクチンも接種出来るようになりました。ご協力していただいたお子さんや、保護者の方にはこの場を借りて改めて御礼を申しあげます。


おおよそ1回の治験には、10~20名程度の協力が必要となります。「治験」というと、「実験台」という感覚があるためか、なかなか承諾が得られないこともあります。しかも、普通の予防接種と異なり抗体検査をする必要があるため、採血を数回行わなければなりません。かわいそうだからと言われる方も以外と多いようです。ですが、1回の来院につき7000円程度の謝礼が出ますので、中には「どれだけでも採ってください」と笑顔で承諾されることもあります。


そして今回は、肺炎球菌ワクチンの治験が始まりました。現在の日本の肺炎球菌ワクチンは7価ワクチンというものですが、アメリカでは13価ワクチンという新しいワクチンの接種が始まっています。日本でもそれを導入しようというものです。幸い、今回はすんなりと対象者が集まりました。日本での第1例目を当院で行なって欲しいということで、先日無事1回目を接種しました。早く新しいワクチンが日本でも導入されたらと願っています。


それにしても、皆さんは日本がワクチン後進国というのをご存知でしょうか。Hibも肺炎球菌ワクチンも日本ではやっと始まったばかりで、しかも定期接種ではありません。麻疹/風疹ワクチンの2回接種も海外では麻疹/風疹/おたふくかぜのMMRワクチンを2回接種するのが当たり前の時代ですが、日本では導入されていません。実はこのワクチンも「治験」は済んでいます。僕が大学にいる時に苦労してやったのですが、いつの間にかうやむやにされて消えてしまいました。世界で多く使われているのに、なぜでしょうか。日本はすぐ副反応のことを騒ぎますが、副反応よりよっぽど病気になって合併症を起こすことのほうが怖いという事実を理解して欲しいのですが。


これまでに多くのお子さんの協力があって、新しいワクチンが登場しました。これからもいろいろな「治験」があると思いますので、ご協力出来る場合は是非とも参加をお願いします。そして、早く日本がワクチン後進国から脱却出来るように我々小児科医も頑張らなくてはいけません。そのためにも、多くのお子さんがHibや肺炎球菌ワクチンを接種して国にアピールする必要があります。多くの方のご協力をお願いいたします。


【2010年10月】
よしもと小児科 吉本寿美

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