第136話 子宮頸がんワクチンについて
最近ではニュースなどでもあまり話題にならなくなった子宮頸がんワクチンですが、実は小児科医の間ではちょっと話題になっています。6年ほど前に積極的勧奨接種の差し控えが通達され、我々小児科医は接種しましょうと言えなくなってしまいました。ですが、こんなことをやっているのは日本だけでWHOからも「日本は接種をすべきである」という勧告が出されています。日本がワクチン後進国と言われるのはこのようなことが理由だと思われます。これは恥ずべきことと個人的には思います。
では、なぜこのようなことになってしまったのか。接種後にいろいろな副作用?という症状が現れるお子さんの報道がなされ、各地から同じような報告が上がったために、副作用を重視する日本では接種控えということになったわけです。本当に副作用で苦しんでいらっしゃる方もいないわけではないと思いますが、それ以上に子宮頸がんに罹患する女性が多いという報道はほとんどされません。痙攣を起こしているような姿の映像は何度も流されました。それを見せられれば、接種しようと思う人はいないのも理解できます。普通の方は当然「怖いワクチンなのだ」と思われるでしょう。
一方で、名古屋のグループが調査を行って「ワクチン接種と副反応と思われる異常行動に因果関係はない」という論文が発表されています。残念ながら、このことは全くといっていいほど報道されることはありません。視聴率を上げるには、当然副反応と思われるお子さんの姿を報道し、「ほら、こんなに苦しんでいるのですよ」という番組の方がいいのでしょう。それ以上に子宮頸がんで苦しんでいる方が多いのにも関わらず、国はいつまでこのような状態を続けるつもりなのでしょうか。もしガンになったら「接種しなかったからでしょ?」と言い、副反応が起きた場合には「接種したからでしょ」と言うのは明白です。結局、責任逃れが出来るようになっているのではないかなと思います。結局、責任を負うのは我々小児科医であり、親なのであります。
でも、最近になってこれではいけないという小児科医の先生が全国で増加してきました。そのおかげで、全国的に接種するお子さんがかなり増加しています。特に名古屋地区ではかなり接種するお子さんが増えているということです。中1から高1までが定期接種になっていますが、任意接種と勘違いされている方も少なくはありません。我が家の娘も2人いますが、もちろん接種を済ませています。少し痛みはあったようですが、別に他のワクチンと同じで何も起きることはありませんでした。ワクチンでガンを予防できると思えば、こんなにいいワクチンはないと思っています。
そこで、当院でも積極的に接種を勧めるようにしました。もちろん強制は出来ませんので、説明した方全員が接種をされるわけではありませんが、少しずつですが接種するお子さんが増えてきました。ネットで検索すれば、まずもっていい話というのは出てきません。でも危ないワクチンであれば、世界中で接種するはずもなく、当然こちらとしてもお勧めすることは出来ません。ネットの記事を鵜呑みにするのではなく、きちんとかかりつけの小児科医の先生からお話を聞いて判断されることを希望します。
残念ながら子宮頸がんワクチンについては、現在副反応で後遺症が残ったという方々との裁判が継続中でありますので、積極的接種推奨になることはこれから先もしばらくは望めません。ですが、病気は待ってはくれません。お子様の健康を守るのが我々小児科医の役目ですので、自分は信念を持って正しい情報を伝えて、積極的に接種を推奨していきたいと思っています。
注)今回の記事については、後遺症で苦しんでおられる皆さんのことを否定するわけではありませんので、そこの部分はどうぞ誤解のないようにお願いいたします。
【令和元年 8月】
よしもと小児科 吉本寿美