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第89話 野球は人生そのもの

小児科医のつぶやき|第89話 野球は人生そのもの

 今年の夏も相変わらず高校野球は盛り上がりました。特に注目選手が多かったためか、甲子園は朝から連日満員で改めて人気の高さがうかがえました。「野球は人生そのもの」というこの言葉はヤクルトスワローズの選手で元日本代表キャプテンだった宮本選手が話されていたものです。僕自身すごく大好きな言葉で、そうだよねと思うことがしばしばあります。


 高校野球も今年で100周年ということで、メディアでもいろいろな特集が組まれています。名勝負と言われる試合は、箕島対星稜、横浜対PL学園、熊工対松山商、早稲田実業対駒大苫小牧など挙げればきりがありません。甲子園で活躍すれば当然全国に注目されますし、逆にエラーでもしようものなら非難の的になってしまいます。高校生にとっては人生そのものが変わってしまうことも珍しくはないようです。


 野球小僧の僕の印象に残っている試合は、やはり箕島対星稜です。星稜の堅田投手の熱投には感動しました。NHKのテレビ放送が途中で終わったため、ラジオで聞いていた記憶があります。しかし、その後の彼の野球人生は決していいことばかりではなく、23歳で選手を引退し裏方に回ったそうです。熱投の主人公ということで、相当のプレッシャーがあったのでしょう。現在はというと甲子園で審判をされているので(今年の決勝戦でも塁審を務められました)、人生とは不思議なものです。それは、当時主審をされていた有名な永野さんの影響だそうで、野球はいろんな人に支えられてやれているのだということがわかったそうです。人生もいろいろな人に支えられて生きているので、野球も人生も共通するところがありますね。


 熊工対松山商の試合はご存知の方も多いかと思います。当時僕は大阪の病院で研修をしていて、病室で観戦していました。フライが上がった瞬間優勝だと思いましたが、タッチアップしたらバックホームでアウトでした。その後の結果はご存知の通りでした。ここで終わらないのが野球の面白いところで、アウトになった星子選手は「一生懸命走らなかった」などと避難を浴びたそうです。そんなことはなく、当時の風の影響があったのは周知の事実です。一方のナイスプレーをした松山商のライトだった矢野選手もその後はいろいろ悩んだとのことです。そして現在はというと、星子さんは熊本市内で「たっちあっぷ」というバーを経営され、矢野さんは愛媛のテレビ局の記者として県大会の結果を伝えているとのことです。その時の主審をされた方は数年前にお亡くなりになったそうですが、「人生で最高のジャッジだった」ということを矢野さんにお話しされたそうで、それで救われたということです。棺にはその言葉も収められたとか。しかし、僕らからしたら、ヒーローだなとしか思いませんでしたが、そんな苦労があるとは思いもしませんでした。


 野球を観ていると、みんな同じように一生懸命練習していますがベンチに入れない人もいます。ですが、それが不幸なことかといえばそうでもないようです。一生野球をやっていく人はほとんどいないでしょうから、その後の人生が長いわけでそこからが勝負ではないかと思います。日の当たらないところで努力した人にもきっと日の当たる時が不思議とやってきます。反対に表舞台で活躍していた人が、突然日の当たらないところに追い込まれることもあります。まさに、人生そのものです。いいことばかりは続きませんし、逆に悪いことばかりも続きません。人生とは不思議なもので、誰にでも平等に権利が与えられています。そこで、チャンスを掴むかどうかが分岐点になるかもしれません。


 我が長男もあと1年だけ高校野球をする権利を与えられています。辛いことも多いかなとは思いますし、甲子園は夢のまた夢というのはわかっているとは思いますが、何か人生のヒントを掴んでくれれば野球をやった甲斐があったのではないかなと思います。  野球を始めスポーツをやっている全てのお子さんに、僕の尊敬するバスケットのコーチから教えていただいた言葉を贈ります。

「全ての努力が報われるわけではないけど、無駄な努力はない」



【2015年9月】
よしもと小児科 吉本寿美

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