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第169話 病気を治すということ

小児科医のつぶやき|第169話 病気を治すということ

 ついこの前まで寒かったと思ったら、あっという間に暑くなってきたように感じます。熊本の春秋はとても短いので、なかなか体が慣れるのに苦労します。ずっと住んでいてもそう感じますので、転居してこられた方はびっくりされるのではないでしょうか。これからしばらくはジメジメした熊本特有の暑さとの戦いが待っています。どうぞ体調管理にはくれぐれもご注意ください。    


 さて我々小児科医は、季節ごとにこの病気が流行る時期だというのがある程度わかっていますので、今まではさほど診断に苦労することもありませんでした。ところがコロナウイルス感染症の流行に伴って、病気の流行状況が一変しました。その際たるはインフルエンザではないでしょうか。ここ2年ほど、患者さんを1人も診断していませんし、検査すらおこなっていません。その影響なのか、年明けには流行が収束していたR Sウイルス感染症がいつまでも流行し季節感がなくなってきているように思います。今後どのような状況になってくるのか、注意していく必要がありそうです。        


 小児科医の役割というのは、病気を正確に診断して治療を行うのが主な仕事になります。時には力及ばず、入院をお願いしなければならないお子さんもいらっしゃいます。ただ、我々小児科医は病気が良くなっていくようにお手伝いをやっているだけであって、自分としては治してあげているのではないと思っています。治すのはあくまでもお子さん自身であって、小児科医も保護者の方も良くなっていくための手助けをやっているだけに過ぎないのではないかと思います。薬にしても、病気が良くなるのをサポートするようなものであって、上手くいけば病気がよくなっていきますが、残念ながら悪化していくケースだってあります。ならば薬なんかいらないじゃないかと思われるかもしれませんが、あくまでも薬は病気を良くするためにお手伝いするものだと思ってもらえばいいのではないかと思います。  


 開業してやがて20年になろうとしています。開業当初から当院は薬については最小限の処方で、しかも出来るだけ抗生剤は出さないという方針のもと、これまで診療を続けてきました。残念ながら、「あそこは薬を出さないし、検査もしないから行かないほうがいい」と保育園の方から言われたと、先日通われている保護者の方から聞きました。未だに薬をたくさん出すのがいい病院だと思われているのは残念でなりません。出すのは簡単ですが、出さない勇気がそれ以上に重要なのです。検査にしても、必要と思う検査はやりますが、保育園から「検査をやってこい」と無意味なことを言われるお子さんに対しては検査を行いません。あくまでも検査をやるかどうかはこちらの判断であって、園が決めることではないと思います。園児並びに保護者の皆さんが板挟みになる状況は申し訳ないことですが、当院の方針を曲げてまで診療を行うつもりはありません。      


 先ほども言いましたが、病気を治すのは我々の役目ではありません。あくまでも治す手助けをやっているだけに過ぎません。病気の症状に合わせて、吸入や鼻水吸引などの処置をしたりして、病気が良くなるためのお手伝いをやっているだけなのです。咳にしても、本来咳をするのは痰を出そうとしてやっているのであって悪いことではありませんが、今は咳をすることさえはばかられます。そのため「咳止め」という薬を要求されますが、止める薬はなく痰が切れやすくなる薬なのです。医者が病気を治すわけではなく、治すのは患者さん本人であることを改めてわかっていただきたいと思います。医者だけで病気を治すのは出来ないのです。    



【令和4年5月】
よしもと小児科 吉本寿美

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