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第23話 薬を出さない小児科医です

小児科医のつぶやき|第23話 薬を出さない小児科医です

 暖かくなってきましたね。今年は季節性インフルエンザの流行がなく、例年と違った冬でした。これから少しは外来ものんびりとなってくるものと思います。
 さて、最近の経験からいくつか気になった症例です。どう思われますか?


Case 1

日赤でインフルエンザと診断され、翌日当院を受診。熱も下がっており、本人も元気でした。お母さんと相談の上、タミフルなしで帰宅。数日後、お父さんより怒りの電話。「お前、なぜタミフル出さなかったのか。悪くなって日赤に行っている。親戚にもいっぱい医者がいるが、誰に聞いてもそれはおかしいと言っている。お前はいつも薬をださんが、その後よその病院に行くとすぐ治る。もう、そっちにはいかん!もう少し勉強しろ。どこの大学出たのか?」慌てて、日赤に電話して様子を聞きましたら「ニコニコして帰ったみたいですよ」とのこと。問題はタミフルが必要だったかどうかということ。本来、ウイルス感染ですのでタミフルは絶対必要なお薬ではないのです。ここはどうかご理解下さい。ちなみに僕は熊本大学を卒業していまして、今でもちゃんと勉強はしているつもりです。


Case 2

数日前、当院受診し風邪薬のみ処方して帰宅。その後再診され、「前回良くならなかったので、違う病院に行って抗生剤もらったら良くなったので、同じ処方をして欲しい」とのこと。お母さんは怒っておられました。今回も診察して抗生剤は必要なしと判断して出しませんでした。このケースですが、本当に抗生剤を内服したからよくなったのか、治る時期ではなかったのか、そこはわかりません。出来れば良くならなかった時も続けて当院を受診して欲しかったですね。悪くなっていたらこちらも何らかの検査をするなどの方法があったのではと思いました。


Case 3

よく来られる患者さんですが、お母さんから「この前ある病院に行ったら、この小児科の先生は抗生剤を出さないね~と言われましたが、どうなのでしょうか」と質問されました。僕は基本的に不要な抗生剤は出しません。本当に抗生剤が必要な病気は限られているからです。他の病院の処方箋を見ると、抗生剤やステロイド、あるいは気管支拡張剤などいろいろ出されているケースがよくあります。それが果たしてお子さんのために良いのでしょうか?何を狙って処方されているのかわからないケースも多いです。山ほど薬出せばどれか効くでしょうし、説明も「薬出しますね」で済むので楽ですけどね。でも、それではいつまでたっても耐性菌は減りません。これが日本の現状なのです。


いずれのケースも、僕がもっと多くの薬を出していれば問題にはならなかったのかも知れませんが、それでよかったのでしょうか。僕のようなスタイルは人気がないと思っていますが、これからも今のスタイルを変えるつもりはありません。確かに薬をいっぱい出せば説明も簡単で済みますし、医者にとっては楽なのです。保護者からの受けもいいと思いますが、子供にとっては多くの薬を飲むのは苦痛ですし、いらない薬を飲む必要はありません。そのかわりに、当院ではいろいろな検査を行ないますし、任意の予防接種を推進しています。そうすることが、病気の減少や医療費削減という社会貢献につながりますし、Hibや肺炎球菌の感染症が減少するので、抗生剤処方をもっと減らすことが出来ると思います。実は抗生剤を出さないというのは勇気が必要なことなのです。


どうか、当院はこのような理念に基づいて診療を行なっているということをご理解下さい。薬をあまり出さないちっぽけな小児科ですが、応援よろしくお願いします。


 

【2010年3月】
よしもと小児科 吉本寿美

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