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第59話 同じ事の繰り返し

小児科医のつぶやき|第59話 同じ事の繰り返し

以前、NHKで矢沢永吉さんの特集番組が放送され、一人で観ていました。矢沢さんと言えば、僕らの世代では絶大な人気を誇ったロックシンガーです。今でもチケット確保は困難を極めると言われているほど人気があります。一見、派手そうに見えますが実は凄く謙虚な方で、受け答えも好感が持てました。その番組の中で僕が一番心に残ったのが、「結局同じ事の繰り返しなのよ」とう矢沢さんの言葉でした。こんな偉大なスーパースターでも一緒なのだなと思いながら番組を見ていました。


開業して10年目を迎えますが、そう考えると僕らも同じ事の繰り返しではあります。この季節にはこの病気が流行するから、この検査が必要でこの薬を処方しなければならないというのを毎年繰り返しています。以外と切り替えが出来ないこともあり、この検査はどうだったかなとか、この薬の量はどうだったかな、出席停止期間はどうだったかなど、ふと忘れてしまうこともあります。同じ事の繰り返しではありますが、頭の切り替えが上手く出来ない年齢になってきたのかもしれません。


ところが、不思議な事に今年の冬は恐ろしいほどインフルエンザの流行がありません。成人の流行はある程度あるようですが、小児について言えば全くと言っていいほどありません。現に、学級閉鎖の報告はほとんどありませんし、救急病院の夜間受診患者は驚く程少ないということです。ワクチン効果だけで今年の状況が説明出来るとは思いませんが、一体原因は何なのでしょうか。お陰さまで、体力消耗もなく元気な冬を過ごさせていただきました。おおよそ、インフルエンザが流行しない年は春の季節もそう外来は多くないので、今年はもう少し元気な時間を過ごせるのではと期待しています。嵐の前の静けさでなければいいのですが。


更に最近は重症の患者さんに出会う機会も少なくなりました。事実、県下の細菌性髄膜炎患者はここ数年いないと聞いています。Hib、肺炎球菌ワクチンの接種率が上がったことが一番の理由だろうと思います。やっと日本もここまできたかという思いです。4月からはこの2つのワクチンも恐らく無料化になりますので、ますます病気の質も変わってくるのではないでしょうか。これを維持するためには、今後もワクチン接種という同じ事を繰り返し行っていくしかありません。


これから先も、この仕事をしている限りは同じ事の繰り返しを毎年やっていくことになりそうです。それを面白いと感じるか、辛いと感じるかは自分次第でしょう。幸い、小さい子どもたちが受診してくれるので同じ事の繰り返しでも新鮮な気持ちにさせてくれます。この点はありがたいことです。永ちゃんになんか追いつくことなんかとても無理ですが、自分なりにコツコツと同じ事を繰り返して、たまには少し新しい事も取り入れながらやっていきたいものです。しかし、やはりスーパースターは凄いと改めて感じました。



【2013年3月】
よしもと小児科 吉本寿美

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