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第37話 再び、薬の処方について

小児科医のつぶやき|第37話 再び、薬の処方について

以前にも書いたと思いますが、もう一度内服薬の処方について僕の考え方を述べてみたいと思います。あくまでも僕の考えですので、その点はご了承下さい。

なぜ、このことを書こうかと思ったかというと、先日父より急に電話があったからです。内容はというと、「よしもと小児科は薬を出さないから、他の病院にいっぱい患者が流れている」と誰かから言われたとのこと。「えっ??」と思いました。父にしてみれば、息子の事が心配だったのでしょうが、恐らく父の知り合いが僕の処方に不満で父に相談したのだと思います。ですが、僕はそう言われても不要な薬は処方しませんし、特に抗生剤は開業当初から現在も「発熱のみでは出さない」と決めておりますし、今後も方針変換はしないでしょう。


4月から登園を開始されたお子さんが多くなり、「全く鼻水、咳が止まりません」という相談が増えました。その場合にも薬は出すのですが、「飲んでも恐らく登園している以上は、ぴたっと治す事は難しいですよ」と言うことにしています。しばらく内服してもあまり状態に変化がない場合は、「長く飲まれていますが、症状に変化ないしお子さんも元気なので一旦辞めてみてもいいかなと思いますが」ということで処方しないケースもよくあります。


こういうことで、「薬を出してもらえない病院」ということになったのかもしれませんね。絶対に必要な薬は出すようにはしていますが、おなかいっぱいになるようなてんこもりの処方はしません。まあ、薬をよく処方される病院のほうが来院者も多いというのをよく聞きますし、実際そういう傾向があるようです。特に耳鼻科の先生のところは薬も多いので人気なのかもです。ですが、果たしてそれでいいのでしょうか。そんなに多くの薬をこどもが飲めますか。飲んでいる薬の種類を理解されていますか。多くの薬を「じゃ、出しておきますね」というのは簡単です。しかし、「薬は出しません」というのは本当に難しいですし、理解してもらうには手間も時間もかかります。そのためには正しい診断を行なう必要がありますので、当院では検査や処置が他に比べれば多いかもしれません。


せっかく病院に来たのに薬も出してもらえないという不満があるのもわかります。しかし、薬を飲まなくても良くなっていくという判断をしてあげるのも大切なことですし、それが子供さんのためになるならば不要な処方はしないという信念も大事だと思います。なぜ、咳が夜にひどくなるのかという質問も多いのですが、どんな咳にも気管支拡張剤を出せばいいというものではありません。今の状態はこうだから、このような薬を使いましょうと説明して、出来るだけ薬に頼らない小児科医であり続けたいと思います。それには保護者のご理解が不可欠なのです。どうか、ご協力をよろしくお願いします。


【2011年5月】
よしもと小児科 吉本寿美

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