第80話 今年を振り返って
恒例となりましたが、今回は今年を振り返ってみたいと思います。あまり話題がない1年だったようにも思いますが、みなさんはどんな1年でしたか?
まず、小児科で最大の話題は水痘ワクチンの定期化ではないでしょうか。残念ながら今回は水痘だけが定期化されて、おたふくかぜやB型肝炎は先送りされましたが、それでも大きな進歩だと思います。今後は水痘の患者さんを診る事はかなり減少することが期待されます。数年以内には他の2つのワクチンも定期化されるはずですので(そう願いたいのですが)、そうなれば日本もやっとワクチン後進国から抜け出せるのではと思います。
またワクチン関係では、当院でもかなりロタウイルスワクチンとB型肝炎ワクチンを接種されるお子さんが増えてきました。基幹病院の先生の話では、以前よりロタウイルス感染症で入院する患者さんが明らかに減少したそうです。医療費削減に貢献しているのが明らかになってきていますので、喜ばしいことです。それでもロタワクチンについてはまだ接種率が50%にも届かないと思いますので、これを上げていくことが今後の課題です。定期化されれば簡単に上がるのですけどね。
外来診療については、ここ数年本当に重症の感染症患者さんが減ってきた印象があります。その最大の理由はワクチンの効果であろうと思います。この傾向は今後も続いていくでしょうから、小児科医にとっては喜ばしいことです。ひどい脱水のお子さんを診ることもほとんどなくなり、点滴をする患者さんも減ってきたように思います。
その一方で、喘息のお子さんは増加傾向にあるように感じます。酸素濃度が低下して入院するケースもちらほらあり、以前に比べたら増えている印象があります。なかなか診断は難しいのですが、きちんと治療をやっていけばある程度は治っていくことが期待出来る疾患ですので、早めに診断して治療に結びつけていくようにしたいと思います。勤務医時代に喘息のお子さんを亡くした経験があるだけに、喘息はきちんと早めに対応をしなくてはといつも危機感を持っております。
それから、今年の夏は手足口病もヘルパンギーナもさほど流行せず、驚く程のんびりした外来でした。流行する年は、驚くほど患者さんが受診されるのですが、今年はなぜか少なかったようです。となると、来年は以外と流行するかもしれませんがこればかりは予測不可能ですので、果たして来年の流行はどうなのでしょうか。今年の夏は、かなり雨の日が多かった印象がありますので、天候にも左右されたのかもしれません。
今年1年を振り返ると、受診される患者さんは昨年より減少しました。しかし、ワクチン接種については昨年とあまり変わらなかったように思います。この傾向は今後も続いていくように思います。少子化のため小児科受診の患者さんは減少しますが多様化してきていますので、いろいろな対応が小児科医にも求められる時代になっていくことでしょう。
さて来年はどんな1年になっていくでしょうか。あまりいろいろな病気が流行しない事を願っておりますが、毎年流行する病気(まずはインフルエンザでしょうか)は若干の流行はあるでしょうから、どうかその時期がきたらご注意ください。それでは少し早いですが、良いお年をお迎えください。今年もありがとうございました。
【2014年12月】
よしもと小児科 吉本寿美