第19話 新型インフルエンザについて
新型インフルエンザの話題が連日のように報道されています。そのためか、今年の季節性インフルエンザのワクチン予約は予想をはるかに上回る状況で、電話がつながらなかった方や予約が出来なかった方には改めてこの場を借りてお詫び申し上げます。申し訳ありませんでした。
しかし、現場の状況を無視して唐突に「明日から新型インフルエンザのワクチン予約が出来ます」などと報道されるのはちょっと勘弁して欲しいものです。この時期、特に小児科は患者さんが増えてくるのと同時に予防接種を行っている状況なので、簡単に予約を受け付けることが出来るとは思えません。それでも、報道されると一般の方は「そうなんだ」ということで問い合わせの電話が止まりません。本来は全てのお子さんにワクチン接種が出来ればいいのですが、予約を開始すればまたこの前の二の舞になってしまいます。やむを得ず、当院は基礎疾患のあるお子さんのみの接種に限定しましたが、それでも予約された全てのお子さんに出来るかどうか、未だにわかりません。
報道では、まず医療関係者の接種が優先ということですが、既にワクチンが不足しています。その状況を改善することなく、今後の接種がスムーズに行なわれるとはとても思えません。また、死亡例の報道も連日のようになされますが、実は季節性インフルエンザでも毎年亡くなる方がいるという事実は報道されません。亡くなったと報道されれば、誰だって心配になります。ただ、現場で診察している限りではさほど重篤になるケースはないように感じています。ほとんどのお子さんが2日前後で解熱し元気になっておられます。重篤な患者さんを経験した先生からはお叱りを受けるかも知れませんが、基礎疾患のない方はそう心配しなくてもいいのではないかと考えています。むしろ、Hib髄膜炎が原因でもっと多くのお子さんが亡くなっておられます。であれば、なぜ新型インフルエンザワクチンの確保が出来て、Hibワクチンの確保がこんなにも出来ないのか、不思議でなりません。子供の病気はインフルエンザだけではないのですから。
通常は年末年始から季節性のインフルエンザが流行してきます。その頃から新型インフルエンザのワクチン接種を開始して、果たして効果があるのかなと僕自身は思っています。既に遅かりしという印象は否めません。これはあくまでも私見ですので、その点はご了承下さい。それより、Hibワクチンや今後発売が予想される肺炎球菌ワクチンの接種を行なう方がもっと大切ではないかと思います。これらのワクチン確保を果たして今回と同様国家は行なってくれるのでしょうか。
新型インフルエンザについては、1回でいいとか、いや2回でないと駄目とかいろいろ振り回されていい加減疲れます。これからもいろいろ報道されると思いますが、あまり惑わされないようにしましょう。しかし、メディアの力とは恐ろしいものだと改めて感じさせられました。
【2009年11月】
よしもと小児科 吉本寿美