第133話 平成から令和へ
いよいよ平成が終わり、令和の時代が始まりました。自分にとっては平成3年に小児科医として働き始めましたので、自分の医者としての歴史は平成に始まったと言えるかと思います。また個人的には、平成という時代は、子どもが生まれ、育児と仕事に追われて疲れ果てていた時代だったという印象しかありません。そして平成15年に開業しましたので、平成の半分は開業医として働いたことになります。いろいろ考えてみると、平成の時代は自分にとっては重要な時代だったということになります。
医師になりたての頃は、小児医療は感染症との戦いだったように思います。予防接種も今のように多くはなかったので、ヒブや肺炎球菌による髄膜炎のお子さんに遭遇することは、珍しいことではありませんでした。当然亡くなられたお子さんや、後遺症が残ってしまったお子さんもいらっしゃいました。今では想像出来ませんが、当時は病院当直も多忙で緊張していたのを思い出します。救急病院の当直中も今より多くの子供たちが受診されていたように感じました。
また、おたふく風邪や水痘のお子さんも普通にたくさん受診されていましたので、病気に罹ったほうがいいという考えが蔓延していました。まだワクチン接種が盛んにおこなわれていなかったのが原因だったと思います。今では水痘ワクチンは定期化され、2回接種行えばほとんど罹患することがなくなりましたので、最近では水痘のお子さんを診察することはほとんどなくなりました。令和の時代では水痘のお子さんをいったいどれくらい診察することになるのでしょうか。恐らく水痘のお子さんを診察したことがない小児科医も増えてくるのではないでしょうか。ただ、残念ながらおたふく風邪は平成の時代には定期化されなかったので、依然として患者さんを診察することがあります。令和の時代には是非早期に定期化されることを願っています。
多くのワクチンの普及により、今や小児医療の中心は感染症との戦いではなくなってきたように思います。現に各製薬メーカーから新しい抗生剤が出ることは少なくなってきました。ただ、耐性菌との戦いはこれからも続くように思います。何故ならば、いまだに日本では抗生剤の乱用がなくならないからです。小児科医は本当に処方しないようにと頑張っていると思います。でも、他科の先生の協力なしでは抗生剤使用を減らすことは出来ません。また、何でもかんでも抗生剤を飲むと病気が良くなるという間違った考えを持っている一般の方々が、抗生剤が必要な病気はほとんどないのだということを正しく理解していただくことも非常に重要です。
令和の時代になり、今後小児医療がどのような展開をみせるのか楽しみでもあり、やや不安でもあります。時代が変わっても我々小児科医がやるべきことは変わらないと思いますが、ワクチン問題や心の病をもったお子さんに対するケアなど、まだまだ解決しなければならない問題が山積みのようにも思います。一気に変えることは難しいと思いますので、一つずつ問題解決に取り組んでいかなくてはなりません。決して小児科医だけでは解決出来ない問題ですので、多くの方々の理解とご協力をお願いしたいと思っております。そして不必要な薬を出さない医者がいい医者だというのが理解される世の中に変わっていって欲しいと思う、令和元年のスタートです。
【令和元年 5月】
よしもと小児科 吉本寿美