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第13話 今さらですが・・・

小児科医のつぶやき|第13話 今さらですが・・・

この4月から新しい生活を始められた方も多い事と思います。子供達の入学や進学でドキドキした気持ちもそろそろ落ち着いてきた頃ではないでしょうか。今年は若干寒さが残ったためか、鼻水の多いちびっ子が目立つものの暖かくなるにしたがって少なくなるでしょう。小児科医にとってはちょっぴりほっとする季節になりました。しかし、この時期には健診がたくさん入ってきますので、開業医の我々にとっては通常の診療以外でも忙しくなる季節です。病院以外でかかりつけの子供達と出会うと、子供達が不思議そうな表情で見つめてくれます。


話は変わりますが、先日ニュースで報道されご存知の方も多いと思いますが、人気お笑い芸人が結核に罹患したことが判明しました。今さらという方も多いのではないでしょうか。昔の病気と思われがちですが、実は結核は日本では今なお罹患される方も多く、珍しい病気ではありません。幸い、小児では結核の患者さんに出会う事はめったにありません。僕自身も実際の患者さんを見たのは大阪の病院勤務時代に一度だけです。フィリピンから来られた患者さんで、当時は隔離などの措置が必要でかなり大変だった記憶があります。昔の小児科の先生にとっては当たり前だったと思いますが、僕にとっては初めての経験で新鮮でした。


それと百日咳の流行も、依然として問題になっています。子供の病気と考えられていますが、実は患者数が増加しているのが成人の百日咳なのです。診断は疑えば比較的簡単なのですが、まず疑うかどうかが問題です。当院の状況ですが、昨年も成人の百日咳を数名診断しましたし、今年も既に1名診断しています。いずれも長引く咳が主な症状でした。薬飲んでも治りが悪ければ疑う必要があります。当然、3ヶ月未満のお子さんでは、長引く咳では疑う必要があり検査を積極的に行っていますが、今年も既に数名のお子さんを百日咳と診断しました。


そこで注目されるのがやはり「予防接種」です。残念ながら3ヶ月未満のお子さんには三種混合の予防接種が出来ませんので、どうしても百日咳に罹りやすいのです。成人の百日咳も年齢とともに抗体が下がってくるのが原因のようですので、これを予防する目的で6年生で接種する二種混合ワクチンを三種混合にしようという検討もなされはじめました。ただし、二種混合ワクチンも接種されないお子さんが多いので、我が国ではもう少し接種率を上げる工夫が必要ですね。


残念ながら日本の予防接種は、アメリカのように接種していなければ入学は許可しないという厳しさがないためか、接種率があがりません。麻疹の流行がいまだにあるのはお恥ずかしい限りです。おたふく風邪や水ぼうそうも罹ったほうがいいという誤った考えがお母さん方の間でも広まっています。これからの時代は、病気は罹るのではなく予防するものだという考えが浸透するように願うばかりです。「○○の病気ですか。予防接種されてなかったのでしょうかね。」という会話が普通に出来る時代が日本でも早く来て欲しいものです。


【2009年5月】
よしもと小児科 吉本寿美

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