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第86話 治験とは

小児科医のつぶやき|第86話 治験とは

 皆さんは「治験」というとどんな印象を持たれるでしょうか。多くの方は「実験台?」というふうに思われるのではないでしょうか。治験とはなかなか馴染みのない言葉ですから、そう思われても仕方ないと思います。ですが、この治験というものがなければ新しい薬やワクチンが日の目を見ることはありませんので、医療業界にとっては非常に重要なことなのです。決して実験台とかではありませんので、誤解のないように。


 今年4月から当院でも「5種混合ワクチン」という新しいワクチンの治験を開始しました。5種混合ワクチンは4種混合ワクチンとヒブを混合した新しいワクチンで、数年後には4種混合に代わって市場に出回ることになりそうです。幸い被験者12名と追加症例6名のお子さんの募集も順調で、既にほとんどの方が問題なく1回目の接種を終了しました。治験ですから、当然メリットとデメリットがあります。最大のデメリットは、普通ならば必要のない採血を数回行わなくてはならないことです。きちんとワクチンの抗体が上昇したかどうかという検査をするためのものです。小さいお子さんの採血がかわいそうだといって断念されたご家族もいらっしゃいました。確かに2ヶ月のお子さんに採血を行うのは、かわいそうと思われるのは仕方ないことです。一方、メリットは抗体検査によりワクチンの抗体がきちんと獲得できたかどうかを正確に知ることが出来ます。更に今回はロタワクチンとB型肝炎ワクチンの費用が無料になるという特典もついています。強制ではありませんが、本当に快く協力していただいたお子さんと保護者の方には感謝いたします。


 実は、当院の治験はこれが初めてではなく既にいくつかの治験を行ってきました。そのうちの数種類のワクチンは、実際に現在接種されています。また、現在6年生が接種している2種混合ワクチンも3種混合に移行していくのですが、そちらの治験も無事に終了して現在認可を待っているところです。ただ、今までの治験で1つだけ残念なことがあります。それは大学時代に行ったMMR(麻疹+風疹+おたふくかぜ)ワクチンの治験ですが、何故か未だに認可されていません。認可されれば、海外と同じようにおたふく風邪ワクチンを任意で接種することもなくなるのですが、なぜなのでしょうか。聞くところでは、おたふく風邪ワクチンは単独で定期接種になる予定はないらしく、MMRワクチンとして定期になるのではないかと言われています。1日も早く認可してもらいたいと願います。


 日頃普通に接種しているワクチンなのですが、実はこのような過程を経て市場に出てきているというのを知っていただければ幸いです。ワクチンが増えてきましたので、今後もワクチンがいろいろ混合されていくのではないでしょうか。そうすれば、接種回数も減りますし間違いも起きにくくなります。これからも、当院では新しい治験の依頼があった場合にはランダムにご協力をお願いする場合もあるかと思いますが、もしも可能であれば将来の子ども達のためにも是非ともご協力をお願いいたします。


 通常の診察を行うのは当たり前なのですが、このような未来の子ども達へのお役に立てるお手伝いを行うのも重要な役目だと考え、当院では積極的に治験に参加しております。ほとんどスポットライトの当たらない部分ですが、これからも可能な限り協力したいと考えております。



【2015年6月】
よしもと小児科 吉本寿美

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