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第149話 今小児科医として出来ること

小児科医のつぶやき|第149話 今小児科医として出来ること

 まあ、これほどまでに新型コロナウイルス感染症が大変な事態になるとは思ってもみませんでした。今年の初めは、どうせコロナウイルス感染なんて夏には収束するのじゃないのと甘く考えていました。ところが、事態は思っていたより長期化の様相を呈してきました。何が正解なのか、現時点ではわかりません。個人的にはマスクの必要性もどうなのだろうかと思っていますし、無症状の人にPCR検査を行なって陽性と判定することにどれだけの意味があるのか、疑問に思っています。ややマスコミが暴走している感もありますが、この状況はあとどのくらい続くのでしょうか。犯人探し、魔女狩りの状態になってきている社会はどう考えてもおかしいと思います。        


 幸い、熊本では患者さんの発生はある程度収まりつつある状況のようで、しかも小児については重症になりにくいという報告もあるようですので、コロナウイルスの感染については現時点ではあまり心配はしていません。ただ、これから寒くなってきた場合に、当然インフルエンザとの鑑別が難しくなってきますので、その時にどう対応しなくてはいけないのか本当に悩ましいところです。厳重装備で診察や検査をすることになれば、子供たちはきっと怖がるでしょうし、笑顔も消えてしまうでしょう。今でもマスクマスクと言われて、小さいお子さんが黙ってマスクをはめている姿を見ると、本当にこれでいいのかなと疑問に感じてしまいます。ちなみに先日WHOは5歳以下のお子さんのマスク着用は不要という指針を公表しています。      


 最近は子供たちの口からも、「コロナじゃないかな?」という発言を聞くことが増えました。それほど浸透してしまいましたが、実はコロナ以外の病気の方が多いのをどうか知っていただきたいと思います。これからはR Sウイルス感染症も流行してきます。入院になるケースも増えてきますし、喘息のお子さんも増えてきます。当然発熱があればコロナとの鑑別は必要になって来ますが、基礎疾患がないお子さんについてはそう悪化することはないようですので、小児では過度に心配する必要はないのではないかと思います。ただそこから年配の方に拡散されてしまうと、それは困りますが。  


 小児科医として今何が出来るかというのを考えると、コロナについてはあまり出来ることはないように思います。正しく恐れることが重要で、こちらからあまり恐怖心を与えてはいけないと思います。そのためにも、自分は出来るだけ普段通りの診療スタイルでやれるところまでやっていこうと考えています。駐車場診察や車内診察をされているクリニックもあるようですが、果たして熊本ではそこまで必要なのか。正解は誰にもわかりませんし、やり過ぎても悪いことはないと思います。ただ、表情の消えてしまった世の中が続くことは決していいことではないと思います。人間は感情のある生き物ですから、嬉しい時は笑い悲しい時は泣くという当たり前のことが、マスクという物体によって消し去られてしまうことだけは避けなくてはいけないと思います。    


 どうせ田舎の小児科医ですから、自分がワーワー言ったところで何かが変わるわけではありません。自分の考えが間違っていることもあるでしょう。でも、この状況がおかしいと思っている方は自分以外にもたくさんいらっしゃると思いますが、そう発言することを社会が許さない状況に陥ってしまっています。以前のような普通に会話が出来て、楽しくおしゃべりが出来る元の社会が戻るまで、子供たちにとって何か正解なのかを考えながら診療に向き合っていこうと思います。どうか、憎むべきはコロナであり、人ではないというのを今一度思い出してください。      



【令和2年9月】
よしもと小児科 吉本寿美

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