第65話 改めて健康について思うこと
健康が一番とよく言いますが、健康って何だろうと思う事が最近多くなりました。病気しない事が一番の健康であるということは間違いないのですが、簡単には解決出来ない心の悩みがある場合はどうなのでしょうか。これだって、ちゃんとした病気だと思いますが、なにせ表立って見えませんので周囲に理解してもらうことはなかなか難しいものです。外見上は全く健康そうに見えても、実は心に大きな悩みを持っているという方も現在では多いようです。
以前は成人に多かったのですが、最近では小さいお子さんの中にも、ちょっと簡単には解決出来ないようなこころの問題を抱えるケースが増えてきました。よく経験するのが腹痛や頭痛です。特に週の初めになると必ず朝から「お腹や頭が痛い」といってやってくるケースが増えました。この場合、週末に同じ訴えで受診する事はほとんどありません。「どうもないから、学校行こうか?」と言うと表情が暗くなり、「じゃ、今日は休んでいいから明日から行かなんよ」というと、みんなほっとした表情をします。
予防医学が進み、以前のような重症感染症は少なくなって、その代わりに心が病んでいるケースが増加しました。小児科医もこのような問題に対応していかなければなりませんが、我々のようなクリニックでは限界がありどうしても専門の施設に紹介ということになります。しかし、このような専門のクリニックも現在どこも予約がいっぱいで、すぐに診て頂けるわけではありません。外見は健康そうでも、実は健康とはいえない状況なのです。
ここにきて、小児科の先生の中にも病気で休まれたり、入院をされたりする先生が最近増えてきました。病気になられた先生も大変ですが、かかりつけの患者さんもお困りになられていると聞きます。診療や予防接種など、いきなり知らない先生のクリニックへ行くのも大変でしょう。それだけではなく、職員さんもいきなり仕事を無くす
ことになります。影響は計り知れないものがあるのですね。
自分もいつ病気になるかわかりません。明日は我が身だと思う事も最近多くなりました。いろんな悩みも多くなり、健康かと言われたらなかなか「はい」とは言い難い状況の中にいるように思います。風邪を引いたり、胃腸炎になったりといった病気にはならなくなりましたが、年を重ねてくると体にガタが来ているのを感じずにはいられません。多方面に迷惑をかけないよう、健康診断、トレーニング、食生活の管理などやれるものはやって、いつまでも心身ともに健康でいたいものです。こころにもゆとりが出来れば一番いいのですが、これは永遠に無理かも知れません。「医者の不養生」とは昔からよく言ったものですが、そうならないように気をつけたいものです。健康のありがたさを最近しみじみと感じるような年齢になってきましたが、まだまだ病気をしている場合ではありませんね。
【2013年9月】
よしもと小児科 吉本寿美