第172話 顔晴ろう
今年の梅雨はあっという間に終わってしまったかと思いきや、戻り梅雨なる現象に見舞われて結局いつもと変わらない程度の雨が降ったように思います。今年は熊本での豪雨被害がなかったのが幸いでした。自然災害はどうしても人間ではコントロール不可能ですので、ホッとしています。但し、台風シーズンはこれからだと思いますので、油断は禁物です。
ですが、梅雨明けしたとはいえ、どうも気分が晴れないのは皆さんも同じではないでしょうか。またしてもコロナウイルス感染症が猛威をふるっています。まさかここまで再拡大するとは思っていませんでしたので、正直びっくりしているというのが本音です。先日当院の職員も3名罹患して病院を休診させていただきましたが、3人とも発熱などもなく無症状でした。現在は誰が罹患してもおかしくない状況ですので、これまで通り感染対策を続けていくしか方法はなさそうです。
とは言っても、少しずつ元の生活が戻ってきているのも事実です。まだまだ完全ではないものの、お祭りやイベントも少しずつ開催されるようになってきましたし、スポーツ観戦も徐々に元通りの姿になりつつあります。まだ声出しながらの応援が出来ない辛さはありますが、これもそのうち解除されると思っています。このようなイベントやスポーツというのは人々に笑顔を届けてくれますので、我々の生活には絶対に欠かせないものです。このような時だからこそ、笑顔というのは非常に大事なことだと思います。どうせ結果が同じならば笑った方がいいと、いつも思っています。ブスッとしているより笑った方が、周囲も笑顔にするという効果があるように思います。
一方、クリニックの方はどうかというと、昔のように大勢の方が受診するという状況ではありません。おそらくコロナが落ち着いてもこのような状況は変わらないと思います。ですが、これがもしかしたら本来の小児医療のあるべき姿なのかもしれません。3分診療で薬を出して終わりというのはあまりにも寂しいものでした。じっくり話して必要な処方だけにするという、医療本来の姿に戻るいいチャンスなのかもしれません。薬で解決できないような悩みを抱えたお子さんも増えてきましたので、今の状況はしっかりと話を聞くのには好都合でもあります。
多くの方が、これまで様々な場所で頑張ってこられましたし、今も頑張っていらっしゃいます。医療業界が大変なのはもちろんですが、恐らく大変ではないという方はほとんどいらっしゃらないのではないかと思います。頑張れと言われてもこれ以上どうするのだと思われるかもしれませんが、自分はいつも「明けない夜はない」という言葉を思い出します。熊本は地震や豪雨被害など様々な困難に遭遇しましたが、その都度みんなで乗り越えてきたように思います。まだまだこの先どうなるか誰にも予想がつきませんが、力を合わせれば乗り越えていけるように思います。難があるから「有り難う」、顔が晴れると書いて「顔晴る」。造語ではありますが笑って困難に立ち向かう、この言葉に込められた想いの深さを感じるこの頃です。
【令和4年8月】
よしもと小児科 吉本寿美