第96話 なくなる?競争社会
やっと少しずつ暖かい日ざしを感じられる季節になりました。毎年のことながら、この季節は新しい生活を始める人を目にする機会が多くなってきて、桜の花がよく似合うのは日本ならではですね。期待に胸を膨らませている方も多いのではないでしょうか。あるいは、挫折をバネにして頑張ろうという方もいらっしゃるかもしれません。人生は山あり谷ありですから、目標に向かって頑張って欲しいものです。
考えてみたら、社会人にしても学生にしても多くの試験を受けて今の立場があると思います。いわゆる競争社会を勝ち抜いてきたわけです。そこには必ず勝者敗者がいるわけで、これはどうしようもないことではあります。スポーツとて同じで、敵チームとの戦いは当たり前ですが、まずはチーム内での競争に勝ち抜かなければなりません。そして勝ち残った一部の選手だけが表舞台に立てるわけで、表舞台には出ることが出来ずに陰で涙を流している選手もいるのです。しかし、努力はいつか報われるもので、その後どん底から這い上がっていった選手が活躍するケースや、逆に今の地位に安心してあぐらをかいているような選手が痛い目にあうのはよくあることで、人生とはよくできたものです。
これが社会では今も当たり前なのですが、最近の教育現場ではどうも「平等」というのに重点が置かれすぎているように感じます。例えば運動会の徒競走だって、昔は3位以内に入った人はリボンを付けてもらえるとか、ちょっとした記念品をもらった時代もあったと記憶しています(実際僕の小学生時代はそうでした)。ところが今は順位をつけるのはタブー視されているようです。勉強が苦手でも、スポーツでヒーローになれるのは素晴らしいことだと思いますが、いけないことなのでしょうか。結局のところ入試がそうであるように、いずれ競争社会に巻き込まれていくわけですから、ある程度の競争というのはどの年代でも必要ではないでしょうか。
ここで勘違いしてもらっては困りますが、何も競争社会を煽っているわけではなくて、ある程度の競争というのはいつの時代にも必要ではないかというのが今回の主旨です。誰にだって人生の中で輝いている時期というのはあるはずです。あまりに平等だけを強調すれば、魅力のある人物はいなくなってしまうのではないかと危惧しています。
但し、医療については平等に医療を受けることが出来るという日本の素晴らしいシステムは賞賛に値すると思います。諸外国のようにお金持ちはいい医療が受けられて、そうではない人は普通の医療さえも簡単に受けることが出来ないのは、あまりに不平等だと思います。ただ、日本でも子どものワクチンについては未だに任意接種のワクチンがあるため、格差が出てきているのは事実です。受けたくても受けることが出来ないというご家庭もあります。少子化を解消するためにはこのようなワクチン行政にもメスを入れて欲しいものです。なんとか他の先進国には追いつきつつありますが、まだまだワクチンについてはいろいろと問題はあるようですので、今後改善されればと願っています。
【2016年 4 月】
よしもと小児科 吉本寿美