第137話 百日咳ついて
HPにも記載していますが、百日咳の流行が止まりません。最近は熊本県全体でも毎週10名程度の報告があります。百日咳は診断したら全例報告することが義務付けられましたので、ほぼ正確な数字だと思います。ただ、これが全てかといえばもっと多くの罹患者がいるものと思われます。
まず、罹患している人でも受診しない人がかなり多いように思います。なぜかといえば、咳だけが症状となるからです。もちろん発熱もありませんし、比較的日中は咳が出なくて夜になるとひどい咳が出るというのが特徴的です。また、罹患する人は小学生高学年くらいからが多くなります。中学生も意外と多いようです。ですが、この年代になると部活や塾などで忙しくて、どうしても受診することが出来ないため、いよいよ咳が止まらないということで受診される人も少なくありません。もちろん、ワクチンを接種していない3ヶ月未満のお子さんも罹患してしまいます。実は自分の長男も1ヶ月の時に罹患してしまったのですが、夜は無呼吸といって息が止まってしまう状態になることがありました。幸い、入院せずに済みましたが小さいお子さんは入院治療となるケースも少なくありません。
診断は以前では主に採血でおこなっていましたが、最近では発症して1ヶ月未満のケースではlamp法という鼻腔検査で精度の高い検査が出来るようになりました。早めに受診してもらえば、抗生剤の内服が効果的です。ただ、1ヶ月も受診されなかった場合は抗生剤の効果も期待できず、字のごとく100日程度咳が続くのを覚悟しなくてはなりません。咳で肋骨骨折を起こす場合もありますので、たかが咳とはいえ注意が必要です。
では、どうやって予防するかといえばやはりワクチン接種が最も効果的です。ただ、現在は4種混合が3ヶ月からしか接種できませんので、これを2ヶ月から接種にする必要があります。幸い5種混合の治験も終わっており、こちらは2ヶ月からの接種となる予定ですので、1日も早く5種混合の接種が出来るようになることが望まれます。また、接種をしても抗体価は徐々に低下していきますので、追加接種が必要です。理想的には年長児で3種混合ワクチンを1回接種するといいのですが、まだ任意接種で接種するお子さんは少ないようです。また、6年生で2種混合を接種していますが、代わりに3種混合を接種するのが理想的です。ところが、治験は終わったもののいろいろな問題があるのか、しばらくは代わる予定はないようです。ワクチンについては国が先頭に立って推進しないと、罹患する患者さんはもっと増え続けることが危惧されます。何とかならないものですかね。
一方、医師の側にも責任はあります。なかなか百日咳というのが頭の中になければ、診断に結びつくことはありません。小児科医でも検査をしたことがないというのもたまに聞きます。違ってもいいので、疑わしきは検査をしてみる必要があるでしょう。たまたま、先日会合で会った他の地区の先生に百日咳の話をしたところ、後日電話がかかってきて「先生、検査をしたら結構百日咳の子どもさんいるものだね」と連絡を受けました。まだまだ認知度が低いため、今後は啓蒙活動をおこなっていく必要性を最近感じています。ただ医師だけではどうしても限界がありますので、こんな病気があるからたかが咳と思わないで怪しいと思ったら早めに受診してもらうように、医師と患者さんが一緒になって減らしていくしかないと思っています。
【令和元年 9月】
よしもと小児科 吉本寿美