第130話 小児科医だって病気します
何とも変なタイトルになってしまいましたが、タイトル通りです。よく皆さんからお尋ねされるのですが、小児科医だって風邪もひきますし、胃腸炎にもたびたびなります。実際、1月末から風邪をひいてしまいちょっと咳き込んでいます。また、僕自身はこのクリニックでも一番胃腸炎になっているのではないかというくらい、何度もやられました。それでも休むことは出来ませんので、何とかごまかしながら診察をやっています。但し、これまで1回だけ診察が出来なかったことがあります。それは「尿管結石」になった時でした。未明にやばいなと思って救急外来を受診し、予想通り尿管結石の診断。座薬でコントロールするしかなく、何とか午前中は頑張っていましたがさすがに痛みには耐えられず、その日の健診も妻に代わって行ってもらったという、苦い経験があります。救急外来に苦悶の表情で受診される成人の方の気持ちが初めて理解できました。
これは小児科医の宿命なのですが、医者になり立ての頃は必ずと言っていいほどいろんな病気にかかります。大学病院に勤務していれば感染症のお子さんはほとんどいませんのでそうでもありませんが、救急外来をやっている市中病院に勤務すると、これでもかというほどいろいろな病気をもらいます。看護師さんもしかりで、うちで働き始めた看護師さんは最初の頃は一通りいろんな病気をもらうようです。溶連菌、アデノ、胃腸炎、インフルエンザなど、最初は小児科特有の洗礼を浴びてしまいます。ところが、ある程度勤務を続けていくと不思議とあまり病気をもらわなくなります。僕も胃腸炎以外はあまり病気にはかからなくなりました。このことは、登園しているお子さんたちにも当てはまることかもしれません。入園当初はこれでもかというくらい病気になりますが、数年経てばあまり病気にならなくなるのと一緒です。
とはいえ、やはり病気にかからないようにするのが一番で、そのためには予防が一番です。手洗いうがいはもちろんのこと、十分な休息と食事にも気を配る。当たり前のことをきちんとやることではないでしょうか。また、適度な運動をするというお医者さんも意外と多いようです。マスクについてはいろいろ意見がありますが、僕自身はマスクをして診療することはやりません。よく不思議がられますし、マスクをつけて診療されている先生もこの時期は多いかと思います。では、なぜ僕がマスクをせずに診療をするのか。それは研修医時代にさかのぼります。最初マスクをして診察を行っていましたが、ある時指導医の先生からこう言われました。「自分がマスクをつけて診察をされたらどう思う?。あまりいい思いはしないでしょ。何か不潔なものを診察しているように思わないかな」。確かにと納得しました。血液や腎臓の病気のお子さんに対する時にはマスクをしないといけないこともありますが、それ以来一般外来ではマスクをすることはなくなりました。マスクをすれば表情もわかりませんので、これからも僕自身はマスク着用での診察は行わないと思います。着用しなくてもインフルエンザに罹患したことはありませんので、マスクも過度に信用されない方がいいのかもしれません。
どうしてもこの時期は忙しくなりますし、体調を壊すこともあるかもしれませんが、そこは「プロ」ですので「明るく、楽しく、元気よく」をモットーにこの冬を乗り切りたいと思います。皆さんも春が来るまであと少し頑張りましょう。
【2019年 2月】
よしもと小児科 吉本寿美