第155話 アフターコロナ
ここ1年ほどのつぶやき原稿を振り返って見返してみると、ほとんどがコロナに関連した記事でした。何だか今見てみると情けなくなって、自分でも飽き飽きします。他に何か書くことなかったのでしょうか。何ともお恥ずかしい限りです。どこもかしこもコロナコロナで、皆さんも自分同様嫌気がさしてますよね。ただ、ここに来て感染者数も減少しはじめましたし、いよいよワクチン接種も始まりそうですので、少しずつ明るい兆しが見えてきたようにも思います。あとはインフルエンザにおけるタミフルみたいな治療薬が出てくれば普通の生活が送れるようになってくるのではないかと思いますが、もう少し時間がかかるのでしょうか。待ち遠しいですね。
結局、コロナウイルス感染症は小児科医にとってはさほど脅威とはならなかったように思います。ここにきて小児が罹患しても重症化しない、小児が拡散する可能性は低いなどがわかってきたからです。なので、小児科の一般外来診療は内科の先生ほど気を使うこともなく過ぎていこうとしています。但し、小児科でも色々な影響が出たのは皆さんもご存知の通りです。クリニックはもちろんですが、何より基幹病院のダメージが相当なものだというのを先日改めて知りました。結局入院患者も救急受診患者も減少しましたので(世間一般には喜ばしいことなのですが)、熊本地域医療センターにおいては夜間救急をストップすることも検討されているようです。全国的にも有名となった夜間救急の熊本方式が終わりを告げようとしています。再開となるとかなりハードルが高いと思われますので、そうなった場合に被害を受けるのは紛れもなく子ども達なのです。
個人的にはコロナが落ち着いたとしても、クリニックの様子が以前のような状況に戻ることはないと思っています。それは、ちんと予防すれば病気に罹らないということを皆さんが経験されたからです。さらには、発熱も少し待てば解熱するということがわかったのが大きいと思われます。なので、今後発熱で受診されるお子さんはかなり減少するでしょう。ただ、その一方で運動不足による肥満のお子さんが増えたのは間違いありません。また、便秘のお子さんも以前に比べて増加しましたし、さらには身体の不調を訴えるお子さんも明らかに増加したように思います。子ども達が生活様式の変化に追いついていけていないように感じます。腹痛、頭痛などの不定愁訴で受診されるお子さんも明らかに増えていきました。
コロナによって、ここ1年で外来診療のスタイルも激変しました。でも、これが本来あるべきスタイルなのかも知れません。これまで時間に追われてバタバタと診療していましたので、これからはゆっくり時間をかけて診察出来るのではないかと思います。もちろん、心の病を抱えたお子さんなどもこれまで以上に増えそうですので、ある程度時間を取って対応することが出来ればいいなと思います。これまでの待ち時間だけ長くなって、肝心の診察は数分という日本のスタイルはちょっと間違っていると思います。これから小児の感染症はますます減少していきますので、小児科医はその他の分野に力を入れていく必要があると考えています。
ワクチンの推奨、抗生剤の適性使用はもちろんこれまで通り継続して行なっていきますが、これからは新たな診療スタイルを模索しながらやっていくということになっていくのでしょうか。他の業種同様、以前より経営的にはかなり苦しくなってしまいましたが、心の余裕は生まれてきたかもしれません。早くコロナが落ち着いて、以前のような普通の生活と子ども達の笑顔が戻ってくることを切に願っています。
【令和3年3月】
よしもと小児科 吉本寿美