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第102話 常に臆病であれ

小児科医のつぶやき|第102話 常に臆病であれ

 日頃からほぼ一人で診療を行っていますので(隣に妻がいて一緒に診察しており厳密には一人ではないのですが)、つい独りよがりな診療になってしまうのではないかと思うことがあります。果たしてこれでいいのかな、もっとこうすれば良かったのじゃないかなというのは、いつまでたっても常に心のどこかにあります。勤務医時代には、周囲に自分以外にも多くの小児科医がいましたので、わからないところは相談したりちょっと違うなというところは訂正してもらったりということがありました。いわばチェック機能が働いていましたので、診療自体は気楽ではありました。


 ところが開業してからは、全ての決断を一人で行わなくてはいけません。診療については当然なのですが、薬品購入や休みのスケジュールなども自分の決定によってクリニックの方向性が決まっていきます。一つ間違えばえらいことになりかねませんので、そう考えると非常に怖さというものがあります。かといって、恐る恐る行動していてもキリがありません。やるときは思い切ってズバッとやる勇気も必要です。そこの兼ね合いが非常に難しいところです。


 今まで診療していて、この程度なら問題ないと気楽に診察をしていて痛い目にあったことは、開業してからも何度も経験しました。この診断と思ったら、実は他の病気だったということは時にあり、そのような経験が小児科医としてのスキルアップにつながったとは思います。決して誤診があってはいけないのですが、最初から全てのお子さんを正しく診断するのは非常に難しいことです。外来の時間は限られていて、一人一人にじっくり時間をかけて診察するのが理想なのですが、現在の日本のシステムではそういうわけにもいきません。短時間でパッと判断して、これだと決断を下さないといけないこともしばしばです。以前に比べたら、最近は見逃しや誤診は少なくなったとは思いますが。


 何でもそうだとは思いますが、ある軽度経験を積んで自信を持っていても足元をすくわれることはよくあることです。仕事もそうですし、日常の生活においても絶対というのはないようです。そのためにも常に心のどこかに「臆病さ」を持つことは大事だと考えています。過剰過ぎてもいけませんので、その加減というのは難しいですね。でも、そうすればあまり大きなミスをすることもないのではないかと思います。


 これから少しずつ寒くなっていくと、受診される患者さんの数は増えてきます。当然ながら生まれてすぐの小さいお子さんも病気しますので、保護者の方はやはり心配になるのは仕方ないことです。そうなると必然的に患者さんの診察をたくさんやっていかなくてはならず、待っているお子さんも多くなればいつも以上に短時間での判断が求められます。勇気を持って診療を行いながらも、こころの何処かには臆病さを持ち合わせておかなければ、きっとまた痛い目にあうでしょう。あとから、これはこの診断だったのだという経験をしないように、忙しさに流されることなく「常に臆病であれ」というのを肝に銘じてやっていきたいと思います。



【2016年 10 月】
よしもと小児科 吉本寿美

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