第197話 治療から予防へ
今年の夏はこれまでに経験したことのないような暑さが続いていますので、ややバテ気味の方も多いのではないでしょうか。熊本はまだもうしばらくはムシムシとした暑さが続くようですので、しっかり睡眠をとって乗り切りたいものです。冬の寒いのも嫌ですが、暑すぎるのもちょっと勘弁ですね。熊本らしいといえばそうなのですが、個人的には春秋があっという間に終わるのが残念です。
さすがにこの暑さですから、当然この夏は熱中症の方が増えているようです。特に高齢の方は、いまだにエアコンを付けずに過ごす方もいらっしゃいますので注意が必要です。もちろん熱中症になったらしっかり治療をすればいいのですが、中には命に関わるケースもあるようですので、やはり熱中症にはならないように予防するのが一番です。そして案外簡単なようで難しいのが「水分補給」という行為ではないでしょうか。単にお茶や水を飲めばいいのではなく、やはり塩分補充も重要になってきます。今はO S−1という便利な飲み物もありますから、汗が出る作業をする場合は是非とも準備をお願いします。
それからこの時期の小児科の外来には、検診の結果を持参してくる方が多くなります。いわゆる「肥満検診」というのが菊池郡市では始まっていますが、特にコロナになってから肥満のお子さんが増えたような気がします。気軽に外で遊ぶことも出来ないというのが原因だとは思いますが、家にいるとどうしても食べてしまうというのもあるようです。子どもたちにとってはコロナ禍の行動制限がストレスになったのは間違いないと思います。その影響で食べる量が増えて体重も増えてしまったというお子さんは少なくはないようです。またこの暑さですから、簡単に「外で遊んで来い」とも言えなくなりました。
結果として肥満が進んで成人病予備軍になってしまっている子どもたちが、最近は増加傾向にあるようです。そうなった場合にはしっかり治療をしないといけませんが、そう簡単にいかないのが肥満治療です。基本は「食事」と「運動」になりますが、食べるなと言ってもお腹は空くし、運動しようとしても簡単には外で遊べないという問題もあります。また肥満のお子さんは運動しようとすると、膝が痛くなるので長く動くことができないということもあるようで、運動も簡単には出来ないのが現状のようです。また入院治療はある程度の効果は期待できるようですが、これもいろいろな事情で難しいのが現状のようです。
かくいう自分も以前検診で肥満を指摘されまして、生活を見直して体重を落とすように心がけました。さすがに自分が肥満だったら子どもたちに痩せろと言っても説得力はありません。食事管理と運動で少しは体重を落とすことができましたが、目標まではまだまだです。若い頃と違って成人すると痩せることがなかなか難しいのは皆さんも経験済みだと思います。増やすのは本当に簡単なのですが、減らすのはなんであんなにも難しいのでしょうね。
病気についても同じで、最近は予防医学というのが叫ばれています。こども達の肥満検診はまさにそれで、早めに発見して病気を予防しようというものです。実際肥満検診で結構な肝機能障害が認められたお子さんや、高血圧のお子さんもいたりしてびっくりします。それからワクチン接種も予防医学の際たるもので、こちらは子どもたちの重症感染症の減少に貢献しています。ワクチンのおかげで小児科の診療風景も昔とはずいぶん変わりました。これからは成人も含めてますます予防医学というのが重要になってくるのではないでしょうか。病気になる前に先ずは予防ですね。
【令和6年9月】
よしもと小児科 吉本寿美