第180話 信じるということ
今回のW B Cは日本でも想像を遥かに超える盛り上がりを見せ、準決勝と決勝はものすごい展開となりました。筋書きのないドラマとはまさにこのことでしょう。そしてそれまで不調だった村上選手の復活は熊本県民にとっては言葉では言い尽くせないほどの喜びとなりました。まさに村神様と言われる見事な活躍でした。最近では日本人もメジャーリーグで活躍する選手が増えて、アメリカとは以前のような力の差はなくなったように思います。特に大谷選手の活躍は日本人としては誇らしいものです。日本のプロ野球も開幕しましたので、しばらくは野球から目を離せない時間が続きそうです。
振り返ってみると、今回の優勝の立役者は間違いなく侍ジャパンの選手なのですが、もしかしたら影の功労者は栗山監督なのかもしれません。まずあのようなメンバーを招集したというのが凄いことです。大リーグはシーズンを重要視しますので、チームが許可しなければ出場は叶いません。またこれまでどちらかというと日本では無名だったヌートバー選手を起用したのも驚きでした。そしてあれだけ不調だった村上選手を最後まで外すことなく使い続けたのが、最大の驚きであり勝利の鍵であったように思います。なかなかあれだけ調子の上がらない選手を使い続けるのは、ともすれば周りからの批判を受けることも予想されます。しかし、栗山監督はきっとそのうち村上選手が活躍するというのを信じていたそうで、それが結果としてあのような活躍を生んだということに繋がっていったのだと思います。
今回のW B Cを見ながら、改めて信じることの大切さというのを実感された方も多いのではないでしょうか。たかが野球とはいえ、いろんなことを教えてもらった感じがしました。信じるというのは、そう簡単には出来るものではありません。もちろん信じていても裏切られることもありますので、最後まで信じるというのは言うほど簡単なことではありません。それでも部下を最後まで信じるというのがトップの力量なのかもしれません。トップの端くれとして自分にも同じようなことが出来るかと言われたら、さすがにちょっと疑問ではあります。もしも自分が栗山監督の立場であれば、途中で村上選手を控えに回したと思いますし、準決勝の逆転の場面は代打かバントのサインを出しただろうと思います。「信じる者は救われる」という言葉もあるように、信じることの大切さを大好きな野球から改めて教えられた気がします。
信じるといえば、病院に来るというのも同じことのように思います。幾つもある中からあそこの病院を信頼して受診しようと思って来てもらっていますので、患者さんに対しては信頼を裏切ることのないようにしなくてはいけないと思っています。そのために、日々向上心を持っていい医療を提供する努力をしなくてはならないと思います。最近ではオンライン診療が始まって、マイナンバーカードを使った診療も準備が進んでいます。アナログの時代はそろそろ終焉を迎えるのでしょうか。ただ、デジタルの時代を信じきってしまうのも危険をはらんでいます。当院でも電子カルテを採用していますが、何度か不具合が生じてカルテが使えなくなる事態が発生したこともあります。そうなればもうお手上げで、データを何一つみることが出来ませんので、診療どころではありません。アナログ時代にはなかった危険性もあるものです。
信じるというのは簡単なようですが、実は非常に難しいものでだと今回改めて教えられた気がしました。たかが野球、されど野球、3年後のW B Cは果たしてどんなドラマが待っているのか、今から楽しみでなりません。
【令和5年4月】
よしもと小児科 吉本寿美